職人文化人類学

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【100年の機屋タケツネに弟子入りします。】 〜機織編〜

2019/7/31 職人文化人類学の実践 Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ

witter:ワタナベ

遂に機織です!!!!未知の世界だった工程に突入です。

毎日、皆さん洋服を着ていると思います。
その布ってどうやって出来ているかって意外と知らなかったりするものです。
何故、手間がかかるのか、何故職人技が必要なのか。
何本かの記事に渡り、諸々読み解いていきたいと思います。

先日、機織の工程を見ていたら美しい職人の手捌きに鳥肌が立ち、感動して涙ウルウルしてしまいました。
織機がまるで生き物のように見え、大きな生命体を操るその職人の姿を見ていたら、まるで映画の世界に入り込んだかのような、不思議な気持ちになりました。

 

明日から遂に機織をさせてもらう、という日の帰りに職人たちとの会話で、
「織機との相性がある。『こいつダメだなー』と織機に思われたら、全く動いてくれないよ。昔からそう言われている。」
と。そんなこと言われたら緊張しかありません。果たして、あたしは織機を動かす事ができるのか…

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それでは、タケツネで繰り広げられている機織りをご案内させていただきます。
わたしは1台の織機を担当させていただき、どうやって織り上げられているのか、
職人のスーパー高速手捌きを超至近距離で体感した話をさせていただきます。

どんな布を織り上げたいかで使用する織機が変わります。
輪奈ビロードはジャガード織機という織機でつくられます。

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↑わたしが担当させてもらった織機です。

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この柄は「荒波」という柄です。あたしのお気に入りの紋様です。
毎日見ていたら、この紋様に愛おしさを感じ始めました。

布はタテの糸とヨコの糸の組み合わせで布は織り上がります。
↓管です。その管をシャトルという装置にはめ込み、
これが経糸の間を左右に行ったり来たりしながら、緯糸を入れていきます。

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筬(おさ:緯糸を打ち込んでいく装置)とシャトルの動きが早くて、写真がブレています。
近くにいるとこの筬が前後するたびに空気が動き、風を感じるのです。

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この紫色のナイロン糸が柄を生み出すための糸。
このナイロン糸の上に経糸が乗っかり、輪をつくって、その輪の集合体によって柄が出来てくるのです。

そしてそのシャトルを織機にセットして、輪奈ビロードを織っていきます。

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この織機の操作は、↓レバーによって止めたり、動かしたりするのですが…これがまた凄いのです!!!
シャトル(緯糸)の動きと、筬の動きを読み、止めたいタイミングでこのレバーを操作します。
停止させる位置を間違えてしまうと、布に傷ができてしまいます。

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そんな職人たちはまるで自分の体の延長のように織機を操るのです。
その手捌きがカッコ良すぎて、俊敏すぎて…

織機を完璧に思い通りに操るには10年ほどはかかる

と、お言葉をいただきました。
たかが何日間か経験したあたしが真似できるはずもありませんでした…音と動きタイミングを感じ、それに反応する体が必要です。

タケツネの輪奈ビロードは絹の糸で織っていきます。
職人が「絹は生き物やから。」と言っていました。

そうです、絹は蚕という生き物が吐いた糸です。
化学繊維のように一定の太さや長さではありません。
そのため、糸がどんな状態かを一本一本観察しながら、織り進めるのです。

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先ほどのシャトルをはめ込み、布を打ち込んでいく部分では、
主に緯糸の調節をします。そこを織機の前面とすると、背面には↑このように経糸が張ってあります。

凄い本数の経糸です。
しかも、輪奈(ループ)をつくる糸と、地の面を織る糸が4層になっております。
全て真っ白なのでずっと見ていると、何処がどこの糸なのか空間の前後感覚がわからなくなります。

糸一本が見えません!!そして、掴めません!!!!
糸一本掴む事がこんなにも難しい事だとは知りませんでした!!!

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職人は、織機が動きながらも、糸に糸くずがついていたら取り除き、糸が切れていないか、経糸に不備がないよう整えます。
動いている中、糸一本、髪の毛よりも細い糸をいとも容易く掴むのです。織機が止まっていても、糸一本掴むのが難しいわたしにはその技は驚愕です。

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↑一丁前風に経糸を見ております。糸が上下に動いている中、見るのは本当に難しい…

そして、輪奈ビロードの柄を生み出しているのは↓紋紙です。
織機に信号を送り、経糸が上下に動く動き方を伝えます。緯糸一本一本が経糸の間を通る度に、少しずつ紋様になっていきます。

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イメージでいうと、写真のピクセルかな…と思います。
この紋紙一枚が一列のピクセルをつくりだすという感じでしょうか。
緯糸一列に紋紙一枚。凄いですよね…こ
の紋紙をつくる職人さんも少なくなっているそうです。

1枚の布を織り上げるためには様々な職人の技が凝縮されています。

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ただ機織りは機械が動いているだけではありませんでした。

自分の気持ちが織機に伝わる。疲れている気持ちでいると織機は動いてくれない、自分が調子が良いと織機も良く動いてくれる。

織機は職人の一部であり、それを操る技がそこにはありました。

そして、職人からはあたしは織機を動かせている、相性が良いとお言葉をいただきました。
嬉しい。とは言いつつも、まだまだ織機とはコミュニケーションは取れませんが…

さて、次の記事ではあたしに機織りを教えてくださっている、先輩職人のカワサキさんのご紹介。
なななななななんと、機織り歴55年というスーパーミラクル職人です!!!お楽しみにっ。

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