職人文化人類学

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【100年の機屋タケツネに弟子入りします。】〜一つの色から三色を創り出す紋切り編〜

2019/10/21 職人文化人類学の実践 Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ

witter:ワタナベ

まだ輪奈ビロードが完成まで至る半分の工程しか進んでおりません!
タケツネ、そして輪奈ビロードの全貌を明らかにすべく、
わたしの潜入弟子入りの記事を書き進めます!

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機場で織りあがった反物は、次に紋切りという工程へ入ります。
紋切りは織りで作られた輪奈(糸のループ)を切るのです。

どういうことかと言いますと、
↓下の写真を見ながらご説明させていただきます。

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柄の部分が濃い色と薄い色になっているのがわかりますでしょうか??
濃い色の部分が輪奈を切った部分、薄い色の部分が切らずに輪奈のままの状態ということです。

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①地(柄がない部分)
②輪奈(糸がループになっている部分)
③切り(輪奈を切った部分)

この三箇所では色の入り方、光の反射具合、立体感が異なり
一つの色で染めたとしても、三色の色がそこには生まれます。
それは輪奈と紋切りによって成せる表現なのです。

というこの紋切り!わたしもやらせていただきました。
なんと!師匠は5代目社長です。
機械の調整も織りも切りも営業も全てをこなすオールラウンダー職人社長です。

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↑わたしの顔が緊張しています。

そして、紋切りに必須な道具、それは小刀です。

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先輩職人早川さんの右手に持っている小刀。
これははどこにも売っていないし、どこもつくっていないそうで、
昔、紋切りをやっていた方達から集めたり、自分で道具を作ったりしているそうです。
自分の手に合うよう、テープを巻いて持ち手をカスタマイズします。

一反切ったら研いで刃の角度を調整しなければいけない。
研ぐのも、角度調整もかなり熟練した技が必要。

「切ることはできるようになっても、刃を研ぐことができるようになるまではかなり時間がかかる」と。

研ぐ微妙な角度、絶妙な力加減、何年やっても綺麗に研げるようにならないのが
この紋切りの難しいところのようです。

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社長の小刀を使わせていただき、直々に、あたしが使いやすいように小刀をカスタマイズしてくれました。
そりゃ気合も入ります。ドキドキ。

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さて、切ります。
切る箇所は、柄によって異なるのですが、反物の全体のバランスを見て決めていきます。
間隔をいい感じに空け…この良い間隔というのが難しい…手の幅で測ったり、
一つ一つの柄を見たり、反物全体を見たり…どこを切れば良いのかを見極めるのも職人技です。

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切るところは輪奈のてっぺんを切ります。
てっぺんを切らないと、輪奈が綺麗にひらかず、染めた時にムラになってしまうのです。
このてっぺんを切るのが、難しい!!!

天を切れるよう小刀の角度を探し出し、糸一本一本が綺麗に切れる力の入れ具合を見つけ出し、
小刀に刃がどこに付いていて手の動きでどこまで切れる範囲なのかを考えながら切っていきます。
綺麗にスッと切れないと、糸がケバケバしてしまったり…これはまさに根気です!!

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根気と言いましたが、あたし、この工程好きです。
朝から作業を始めて気がつくと、あっという間に終業時間でした。
細かい作業が永遠にできるあたしにはモッテコイな工程です!

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少し慣れてきた頃には、糸が一本切れる感覚がなんとなくですがわかってきます。
織りの工程でもそうでしたが、ここでも糸一本を扱えるかどうかが最後の仕上がりに大きく影響するのです。

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↑管巻きの工程でご紹介させていただいた先輩職人早川さんは、最初この紋切りの工程を見て「やってみたい!」と思ったそうです。
そして、タケツネに入られたとおっしゃっていました。

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↑黒い部分は紋切りをして芯材の糸が表に出てきている。

この紋切りという工程があるのが輪奈ビロードの特徴です。
紋切りをするかしないか、どこを切るか、どの模様を切るのか、これらによって布の表情が変わります。
布は一見すると平面のもののように見えますが、よーく見ると、とても立体的な造形物なのです。

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↑ヒゲロン毛石井に工程の面白さを語っている模様

さてさて、次は最後の工程へ突入です!!

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