職人文化人類学

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ヒゲロン毛がいく!〜日本三大紬の一角を覗けば〜

2018/11/28 職人行脚 Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ

witter:石井

みなさま、お久しぶりのヒゲロン毛です。
年の瀬に近づいてきましたね。
もう髪切りたい。もこみちみたいな爽やかな髪型にしたい。

と、いうわけで今回はとあるプロジェクトで
金沢工業大学さまにお呼ばれして、石川県は白山市に行ってまいりました!

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この並び、ヤバすぎる・・・天竺目指します。

白山市には、
かの日本三大霊山、白山と
日本三大紬の牛首紬があります!!
*1 三大霊山は富士山・白山・立山と数えたり、比叡山・恐山・高野山と
数えることもありますね。ありがたや。
*2 紬にも諸説あります。

金沢駅から車を走らせること1時間弱。
猿を尻目に、山を入っていきます。
(一緒に天竺は目指しませんか?)

白山市は、仕立屋がいる滋賀県長浜市と同じく
1市2町5村が合併して巨大な市になりました。
走っても走っても白山市です。

その中に白峰地区があります。
そこは名霊山・白山の登山口。
今回の舞台はココになります。

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今にもシシガミさま出てきそうです。
中心地は2キロほどで歩ける距離。
現在は800人ほどが暮らしています。

かつては1000人を超える人口も年々減少。
後継者不足もやはりここでも起こっています。
この地域には中学校、高校、大学がありません。
小学校も全校生徒30人ほど。

つまり、卒業したら必然的に山を降りなければなりません。

小学校があるから、卒業した子たちには
白峰が故郷として記憶に残る。
小学校すら無くなってしまったら白峰を思い出す子が
いなくなってしまうのです。

しかし!!
なんと白峰にはIターンUターンの若い衆が多くいるそう!
消防団の大会では白峰、ダントツ若いんですって。

彼らは白峰を故郷に思う、
なんとかしたいぜと思う、
そんな若い衆。
市民大学や祭り、青年団など
かなりバリバリやってるようです。
酒も強いです。

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今回白峰を隅の隅まで案内してくれた山口隆さん。通称タカシさん。
「ここから見る白山麓がいいんだよね。」
そう言ってとっておきの場所に連れてってくれました。
オトコ臭くて、青臭くていいじゃない!濃厚酸素最高。

タカシさんは元白峰村役場職員。
「やっぱりさ、箱ばっかみて中身見てこなかったんだよね。」
「自分たちの持ってる財産が何か、知ろうとしなかったんだ。」
「これからはそれを考える時だよね。
そしたらこんなに色んなものあるじゃん、って気づいたよね。」

タカシさん、熱い漢、白山代表。

下山していよいよ日本三大紬の牛首紬の工房へ向かいます。
現在で残るはたった2軒。加藤機業場へ!

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まずは牛首紬とはなんぞ、をカンタンにご説明します!

①着物などの白い生地です!
②素材は絹!そう、お蚕さまです!
③玉繭(双子のまゆ)をヨコ糸に、
単繭(ひとりっこのまゆ)をタテ糸に使ってます!
④フォーマルな場より、カジュアルな着こなしとして使われます!
⑤他に紬で有名なものは結城紬、大島紬など!

百聞は一見にSHIKAZU!!
と、いうことで見て見ましょう。

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そう!気づきましたか!
手と足で動かしているんです。織機を。
昔はどの生地もこうやって織っていたんですね。
ここにある織機は、ダムに沈んだお家やら、
引退してしまったお家から引き取ってきたもの。
だから、それぞれの家の天井の高さに合わせているので
背がデコボコなのです。

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工房にある織機は村の大工がつくった。
あの機械がいいらしい、と聞けばその地まで行って手に入れた。
自分でパーツもこしらえた。

日本三大紬の工房は手づくりだらけだった。

加藤さんの工房は、伝統を守り続けるために
今でもこの時間がかかる作り方をしています。

一度でも途切れると、もう復活はできないじゃないですか。
だからこだわりますよ、文化を守るために。

白峰にダムができた頃、
多くの工房がのれんをおろして山を下った。
残ったのは加藤さんと数社のみだった。

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うちが無くなったら文化自体がなくなっちゃうんだよ。
職人魂が笑顔の奥から滲み出す。

それでも作り上げた商品が届く場所は
日に日に限られていく。

今まで世話になってきた問屋さんを裏切ることはできない。
けど、このままじゃ共倒れですよ。
だから新しいモノ、つくりたいけど精一杯です。
だからひとりでも多く広めてほしい。知ってほしい。

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あぁ〜〜〜もっと喋りたかったぁ〜!
糸繰職人たちが糸を引きながら笑う。

やっぱりこうして人の手で動かす織機で
織った生地は、機械のような均一なものにはならないけど
風合いがでるらしいんです。着たらわかるんですって。

じゃあ着る機会がほしい。
みなさんの空気感に触れる機会がほしい。

それ、つくれないかなぁ。
誰か、今度一緒にいきませんか?
白山、いいところですよ。

加藤機業場リンク

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