職人文化人類学

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IT学生が仕立屋で修行をしたならば。

2018/9/27 職人文化人類学の構築 Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ

witter:石井
(title photo by: Junko Yajima)

月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。

柄にもなく、人の句を詠んでみました。

8月も終わる頃にやってきた武者修行KAZUは
嵐のような3週間を過ごして無事に旅立っていきました。
(生きてます。)

そんな武者修行に対するアンサーソングならぬ、
アンサーブログを返します。ちょっと長くなります。

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18歳のTECH BOYが過ごした、
名人たちとの3週間とは!

KAZUが書いた記事を読んでくれていた方も
そうでない方も、彼がどんな風に
18歳青春まっただ中の平成最後の夏を
仕立屋で過ごしたのかをサマ*っていこうと思います。
(*Summary:要約のことです。Summerではありません。)

まず、KAZUは国際高等専門学校のグローバル情報学科で
ふだんはバリバリテックを駆使している学生です。

デザインや地域でのリサーチ、
ましてや小学生に対しての授業など
まったくの分野外です。

そんな彼が、
大手エンジニア系の企業をインターン先に選ばずに、
なぜ仕立屋と職人にきてくれたのでしょうか。

はじめて話したとき、KAZUは言いました。

外(ニュージーランド)に住んでみて、
はじめて中(日本)の文化について考えた。

西洋化が進んでいく一方で、
じぶんの国の文化はどうなっちゃうんだ。

これからどんな仕事につくか、まだわからないけれど
売りモノやサービスのウラ側にある
ストーリーをちゃんと見てみたい
その伝え方を知りたいんです。

世界にハバタケ18歳。

まじかよ、自分が18の頃なんて・・・
なんてフラッシュバックしてしまいます。

プログラミングやITって、ある意味合理的な世界だと
僕は思うのです。いいとか悪いとかじゃなくて。

そこに、超ウェットでアナログな
人とまじわり、共感も生むことができるエンジニアが
生まれたらどうなっちゃうんだろうなぁ、と思ったのです。

そこで、仕立屋が用意した
〜KAZU SPECIAL SHUGYO MENU〜
次のようになりました。

WEEK 1:取材(リサーチ)
長浜市木之本町に古くから根付く、伝統シルク産業の川上・川中、そして、
その製品を使用する川下の登場人物に対して、取材する。

WEEK 2:執筆(編集)
取材した内容をKAZUのフレッシュな視点で分析して、
”一本の弦に対する「愛」”というテーマで三者三様の記事を3本、
執筆する。

WEEK 3:授業(伝達)
KAZUが自分で聞いて、まとめて、発信した内容を
地元小学校3年生に伝える。制限時間は45分!

パンッパンになってしまった・・・。

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(△キンチョーでガッチガチの頃)

WEEK 1:取材(リサーチ)では、
カイコを育て、生糸をつくり出す養蚕家
その生糸を受け取り、和楽器の弦をつくる弦職人
その弦を使用して音を奏でる箏曲家(そうきょくか)と、

一本の糸が音を奏でるまで、どのように愛情
注ぎ込まれているのかを取材していきました。

取材が終わるたびにKAZUの頭上に
!と???が浮かびあがるのが見えました。

この???が多いほど、次の取材に対する
やる気スイッチに繋がっていたようです。

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WEEK 2:執筆(編集)は、
KAZUの脳みそがバクハツした最初の関門でした。

頭上に???が浮かんでいる上に、
自分の考えを不特定多数の人に
どうまとめて伝えたらいいのやら・・・

それをとにかくまとめようと力技に頼ると、
ひらた〜い文章が上がってくることも。
YOUはココへ何しに来たんだ?と。

そんな時は、夜な夜なKAZUの
内面をホジくる会議が開かれました。
苦行だったと思います。
甘酸っぱい話まで掘り下げたのは
ここだけのヒミツです。

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WEEK 3:授業(伝達)、
文章が書き上がったのもつかの間、
その内容を45分間にギュッとして、
小学三年生を相手に授業をします。

ここで難しいのは、
イチ大人のKAZUが取材して、
その他大勢の大人へ向けて書き上げた内容を
9歳のこどもたちにも伝わるように直さなければいけない。

ということです。

つまり、

①KAZUオリジナルの質問をつくる

②3人のウラ側ストーリーを聞き出す

③不特定多数に向けてストーリーを発信する

④大人に向けて発信したストーリーを
小学三年生に向けて再編集する

⑤最大限メッセージが伝わる45分間の授業を組み立てる

という \ゴリマッチョフルコース/ になります。

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3眠ならぬ3週眠を遂げたKAZUの進化

これだけのフルコースをたいらげたKAZUは
どうなったのでしょうか。

記事がKAZU色になったこと

1本目、2本目、3本目と記事を書いていくたびに、
インタビュー中の質問と、文章の質に変化がおきました。

KAZUも最後の記事で書いていますが、

KAZUだからこそ書けるものかどうかが勝負。

そのために、自分の興味と疑問に
イヤでも向き合わなければなりません。

向き合い続けた挙句、
紙に吐きだされた言葉に埋もれて
頭からケムリ噴き出していましたが・・・

聞きたいことを聞く。
ただ並んでいる質問をなぞらない。

それが現場でアイデアのタネを見つけ出すのに
まず最初にしなければならないこと。

方法論でもなんでもなく、シンプルなことですが
それがタイヘンなんですよね・・・

KAZUはインタビューを重ねるごとに

文章の書き方が変わったのではなく、
話し方が変わった
のだと思います。

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授業後、小学三年生に囲まれるヒキのある授業

この45分間はなんのためにあるのか?

そこがこの武者修行の出発地点でした。

45分間ですべてを理解してもらうことは、ムズかしい。
彼らが自分の育った地のシゴトに、どう興味を持つか。
彼らが10年後、この日の授業を思い出すことがあるのか。

ゴールはただ教えることにあらず。
その先で断片を思い出してもらえること。

これから先の人生で、頭の片隅から引っ張り出してくる
ちょっとしたピースになればいいんじゃないか、
とKAZUと話していました。

KAZUはあらゆるピタゴラ装置をつくり、
メッセージを完結で短い言葉で伝えていきました。

言葉ひとつひとつの選び方や、写真の使い方。
話すスピードや、どのタイミングで生徒に話しかけるか。

すべてのさじ加減は、どんなプレゼンにも
通じることなんじゃないかと思います。

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(photo by Junko Yajima)

授業後、生徒たちはKAZUを囲んでいました。
KAZUの言葉がどれほど伝わったか、それは測れない。

いい音が鳴るには理由がある。

この子たちが、
オレンジ色のROCK Tシャツきてた兄ちゃんが
ああ言ってたな、こう言ってたな、と
思い出すタイミングがくるかもしれない。

そうなれば、この45分間は成功かもしれません。

KAZUが仕立屋に来た理由。

ウラ側のストーリーとその伝え方

まったくデジタルツールを使うことなく、
特別な方法論があるわけでもなく、
この3週間でやったことと言えば、

自分の知りたいことを追い求めること、
それを人に伝えるために自分の言葉で綴ること、

でした。

KAZUが全力で駆け抜けたので
仕立屋も発見の連続でした。

インターンは教えるものじゃない。
インターンは教わることが山ほどありました。
(個人的にはししゃもが流行っているという衝撃)

いつか近い将来、また一緒にできるといいな、と思います。

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