アレ?ちょっと構想ズレてるカモ?!〜全国の職人にアンケートを取ってみた〜
新年度になりました。
株式会社仕立屋と職人は年度始め早々に期末がくるため、もうすぐ一年目が終わろうとしています。次年度もシャカリキ張り切って参ります!
結論から言いますと…
我々の構想、ちょっとズレてるカモ…ということに気づきました。いや、アイデアや方向性が間違っている!というわけでは決してない(と思っている)のですが、取り掛かるべき優先順位がちょっとズレてるのでは…ということが職人や行政の方々に聞き取りをして、わかってきました。うーん、このままでは必要とされるものにならずに、広がらない気がする、と。
新年度早々なんちゅーこっちゃ……とべつに落胆するほどの話ではありません。職人文化人類学は生まれたてホヤホヤで、首が座ってないのも同然です。どちらかというとこの段階で思い込みで事業内容を固めて全速力で進んでしまう方がキケンだと思っています。いま、当事業は構想期〜開発期。固めるより、こねる!(こねすぎてパッサパサにならないように気をつけないとな…)
というわけで、ここで①構想がズレてる?!と思った理由 ②アンケートから見えてきた職人の声 ③立てた仮説と現実のGAP ④次にしなければならないこと
このあたりをしっかりと書き留めておきたいと思います!割と事業づくりの初期に起こるモンダイかと思います。あぁ〜そうそう!と思っている方などにとって多少のヒントになると嬉しいなぁと思います。否、これはただの備忘録です。
①構想がズレてる?!と思った理由
まずシンプルに、コレって職人の課題解決になっているのか?というギモンから始まりました。職人文化人類学は、「職人や行政、学校関係者などと一緒にプロジェクトを実践しながら、そこで得た内容をアーカイブしていく」というアイデアでした。①職人②行政③学校という産官学の三つ巴構造が、結局誰に向けた何を解決する取り組みなのか、うやむやになってきた事態が発生したのです…。
では、なぜそのうやむやが明らかになったのか。それは、職人文化人類学に関わることになるであろう職人、行政職員、学校関係者、大学生へのアンケートの結果からでした。自分たちは「ヨシ!イケてる!」と思っていたアイデアが、実は登場人物にイマイチ刺さっていなかったのです。
そして構想の照準が合わないもう1つの理由がありました。それは言葉の定義。我々がいう「職人」って誰なのか。作ってるものは最終製品?素材?どんな考えの持ち主?文化をつなぐ、「文化」って何?これまで当たり前のように進めてきて、職人や文化という対象が暗黙知化していたため、詳細をしっかり示せず、ボヤッとした内容しか伝えられなくなっていたのです。これについてはまた別記事で詳しく書きたいと思います。
この客観的に外部の意見を素直に聞く、当たり前になっていた暗黙知を明文化する、それがまぁ…なんというか、ツラい作業なワケです…。でもそれをしないといよいよ前に進めないところまで来てしまいました。というわけで、生の声を聞いていきましょう!濃霧の森へレッツゴー
②アンケートから見えてきた職人の声
今まで、職人の方々とそれなりに長い時間を一緒に過ごさせてもらってきました。が、しかし、このように他の地域まで広くアンケートをとって「現状を知る」ということを一度もしたことがありませんでした。(もっと早くやっておくべきだったな…)
今回は2回に分けてアンケートを実施しました。ご協力くださったみなさま、ありがとうございました。
まず、職人文化人類学のアイデアをまとめたカンタンな冊子を職人、行政職員、学校関係者、大学生のみなさまに事前に見ていただきました。そしてアンケートのポイントは以下です。
・職人文化人類学のアイデアが理解できるか
・この取り組みに参加してみたいか
・参加したいけど、参加できない理由があるとしたら何か
ここで得た回答で、事業アイデアがちょいとズレてることが判明します(爆)みていきますと…
おぉ、おおよそ100%ご理解いただいている…!嬉しい!が、しかし…
約15%が利用するイメージが湧いていない。厳密に言うと、まぁまぁ利用したいというご意見の中にも、「不透明な部分がクリアされれば…まぁ。」という声が多かったので、「それはお金を払ってでも利用したいサービスだ!」とは到底なっていないということです…。ここでそのうやむやにしていた部分が見え始めます。いただいたコメントをそのまま載せることはしませんが、「面白い」「新しい」「職人の世界に触れてみたい」という声の反面、次のようなご意見も多くいただいたのです。
「なかなか、こういった長期的なプロジェクトに参加する時間的、人的、金銭的余裕がない。(職人の方々)」
「元気な人、若い人、学生さんならできそうだけど、ウチはなぁ…。(職人の方々)」
「市をあげて取り組むべきプロジェクトかどうかが、結果から見えづらい。(行政職員の方々)」
「誰の何を解決してくれる取り組みなのかよくわからない。(職人、行政職員、学校関係者の方々)」
面白いけど…面白いで止まっている…!ということですよね。本当にしなければならないことが他にあるように思えます。それは何なのかを突き止めなければまたアイデアを考えても同じことになりそうです。
追加で職人の方々37名に聞きました!自分で書くのもなんですが、「職人が抱ている、スグに解決しなきゃいけないことを自分たちは理解できていない」と自覚しました。そして次のような率直な質問を、最終製品または中間素材の製造別、東北や関西などの地域別、年代別、会社規模別で聞いていきました。
・今抱えている目下の課題は何ですか?
・課題が解決したとして、実現したいことは何ですか?
・実現したいことができずにいる足枷はなんですか?
販売・経営に関する課題が6割強でした。経営に関する課題も、「どうやって売り上げをあげていくか」「どうやって市場を広げるか」というご意見が多かったので、販売に直結しているものとみれました。ここで、ひとつ気づいたことがあります。
自分たちが提案してきたことは、未来を見据えた上での長期プランだったが、職人の方々が直面している短期的な課題を解決しないと、長期も何もあったもんじゃない、ということ。
そりゃそうだろ…と言われてしまいそうですが、よく起こりがちなケースな気がします。よく長期的成功を見据えるために「ビジョンをつくる」「そこまでの道筋をたてる」ということの重要性が言われますが(自分たちもしますが)、それだけでは不十分で、目標にたどり着くように実行していけないと、せっかくつくったビジョンも絵に描いた餅になってしまう…という難しさを孕んでいるのかなと思います。
また、「幅広く活動されていて、メディアにも取り上げられている若い職人」と「産地で数少なくなった伝統を守り、耐え忍ぶ高齢の職人」が抱えている課題感はとても近く、若いから、目立つから、バイタリティーあるから、といった条件の違いで課題が異なる、ということはなかったのです。(もちろん細かい違いはみなさんの中でありますが。)
③立てた仮説と現実のGAP
イキナリそれっぽい図を出しますが…職人文化人類学は、「長期的な部分に対して成果を出していこう」というものになっています。※直線上に並べていますが、並行したり繰り返したりするものもあります。でも、職人や工房がいま必要としているのは主に左側の課題解決です。
「長期より短期で結果を出さないと先が見えない。」
そうだとすると、順番が違ったようです。コロナが拍車をかけてしまっていることもあります。産地としてオープンファクトリーの開催や、デザイナーとのコラボ、著名人によるスクールの開講など、左側の課題に対しアタックして結果を生み出している例はたくさんあります。しかしそれすらも今の状況的には参加も厳しい、という声もいくつかいただきました。
職人文化人類学はやっていくとして、その前にやらなければならないことはなんなのか…。
④次にしなければならないこと
と、いうわけでまた振り出しに戻りそうですが、職人の方にさらにお聞きしたいことがあります。それは、ひとえに「収益をあげることがいまの状況を打開する」と言っても、どういう風に売れていくといいのか。
これまで職人の方々とご一緒させていただいてきて、「ただ売れていけばいい」という話ではない気がするのです。①何を誰に、②どうやって売っていくといいのか、③文化をつなぐとはどういうことか、をしっかり理解したいと思います。
そしてそのお話を聞かせていただいたのは、越前和紙筆頭職人!株式会社滝製紙所の瀧 英晃さんです!我々仕立屋はいつお見かけしても眩しくてなかなか声をかけられない存在でした笑 とても濃!密!なお話をしてもらいましたので、乞うご期待!!