職人文化人類学

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金髪女が行く!〜仕立屋と二万頭の蚕達と愛情の注ぎ方〜12日目

2018/6/19 職人文化人類学の実践 Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ

witer:ワタナベ
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※記事が進むにつれ拡大蚕集合蚕の写真が出てきます。
更には、命を失った蛹の集合写真も出てきます。
虫が苦手な方は気合いを入れてご覧ください。
でも、こうやって絹ができているのか、
いう現実を是非とも見て欲しい!
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糸取りが始まりました。
動画を仕立屋のinstagramに載せてます。
これは写真より動画の方が絶対伝わるっ!!

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繭の入っている鍋、これ、熱湯です。
その中に繭を入れて柔らかくして緒(いとぐち)を探します。
糸のはしを見つけて一本一本巻き取っていくのです。

ミニ箒みたいな道具で繭を撫で撫ですると糸が引っかかって
糸の端を見つけることができるらしいのですが、
なぜそれができるのか見てて不思議でした。

経験と感覚ですね。
まさに職人技です。

この糸取りの作業を言葉で説明するのが難しいです。
だから、動画を見て欲しい。

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真剣な表情が本当にかっこいい、
何をしているのかわからないくらいのスピードで手が動き、
熱湯に指を入れながら繭に向かう姿、
何時間でも見ていられるし、見ていたい。

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↑この手前にある木の糸巻きに巻きつけます。
そのあと、「かせ」にするために↓巻き直します。

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かせ一塊をつくるために↓これくらいの繭を使います。
(何個くらいの繭なのかは聞くの忘れました。)

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乾燥したら重さが変わるから升で量をはかります。

糸として巻き取れなかった繭の塊たちは
紬や真綿になるそうです。

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これ↑はどういうものから出てくるかというと、下の写真です。
繭の外側から糸を取っていくのですが、
繭の中心の部分はうまく糸が取れず
鍋から引き上げられます。

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お、気づいてしまいましたね。
そうです。この中に見える茶色の塊は蛹です。

どーんっ。

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結構写真で見ると迫力ありますね。
でも、美味しそうにも見えてきます。
生で見た方が意外と大丈夫です。
触ると固いです。カチカチです。
この蛹達の行く先は釣り具屋さんに行きます。
海では鯛、淡水では鯉科の魚が蛹を好むらしいです。
(ネット情報なので不確かです…)

ヒゲロン毛の趣味は釣りなので
「蚕の蛹で釣ってみたら?」と言ったら
「蚕達の姿を知ってしまったから餌にできない…」
と言っていました。
ヒゲロン毛も蚕の虜になっていますね。

でも、繭を糸にするために
蚕の命は失われるけれども、
捨てるところはないのです。

むしろ、命をいただいているからこそ
無駄にはできません。

今日はゆっくり佃さんとお話しさせていただきました。
糸取りをする人が減ってきている要因の一つに
「季節工」だから今の時代の働き方となかなか合わない、と。

糸取りは一年中仕事があるわけではありません。
桑ができる季節、一年に二回だけ仕事があります。
昔は農家の副業として養蚕をしていました。

現代、会社勤めをし正社員で仕事をしていたら
「そろそろ繭ができるので仕事休みます。」
とか
「蚕のご飯の時間なので桑取ってきます。」
ということは難しい話です。

だから、そもそも養蚕ができる
生活のサイクルではなくなっているのです。

日本には季節があります。
季節によって仕事の売り上げや
仕事内容が変わる職種が多々あります。
季節に移ろいによって職種が変わる、
そんな生活の仕方ができる生き方も
日本らしい生き方なのかなとも思います。

お待たせいたしました、蚕達です。
見てくださいっ!!この成長ぶりを!!
もうたまらないっ、このプクプク感!
この写真だとわからないのですが、
足の周りに産毛が生えていて、
その近辺の皮膚のたるみ具合、
そしてお尻を上手に扱いバランスをとる具合。
大きくなると、そのチャームポイントがよく見えてきて
愛おしさが募ってまいります。

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最近は長さよりも、太さの成長ですね。

そして、蚕達が繭をつくるための準備を始めています。

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このワッフルみたいな装置を蔟 (まぶし) と言います。
桑を食べるのをやめて、繭つくりにかかろうとしている蚕を蔟 (まぶし) に移す作業を上蔟(じょうぞく)と言います。
(専門用語が多くて難しいですね。)

蚕のマンション状態です。
一蚕一部屋的な入居方法です。
この中で繭をつくるのです。

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そうなると、ご飯のあげ方も変わってきます。

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この大量の桑を↓押切器という道具で
ザックザク切っていきます。

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細かく刻み、蚕達の上に広げて
その上に蔟 (まぶし)を置きます。

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そうすると、桑を食べる蚕たちは下で食べ、
繭をそろそろつくるよーという子達は蔟に登っていきます。

繭をつくる直前の子たちは体が透明になってきます。
今日、わかりやすく写真が撮れなかったので
明日また撮ってきます!
とても綺麗で神秘的なのです。

男性は蚕を育て、女性は糸取りをする。
みんな蚕に対しての愛情は深く、
「いっぱい食べていい繭つくるんだよ」
と声をかけています。

手間をかければいい糸ができるという以上の気持ちがこの大音の方達から感じられて、これはとても素敵な仕事だと尊敬の念に堪えないのです。

「あたしが抱いている蚕への気持ちは何だろう…恋?」
とヒゲロン毛に話したら
「それは母性だな」と言われました。

あたしなりの愛情を蚕達に注ぎます。

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