職人文化人類学

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【長浜】ヒゲロンゲが行く!職人のお宅訪問!奥田織物工場のはなし

2018/3/10 職人文化人類学の実践 Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ

職人のお宅行脚、2軒目。
市街地がら山を越えると郷野という集落が拓ける。

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家と家を抜けるとあの音が聞こえてくる。
ガシャンガシャンガシャン・・・

ごめんくださーい!

吉井さんがいなければ完全にシロアリ駆除の詐欺師にしか
見えない・・・。

出迎えてくれたのは、県指定の伝統工芸品網織紬をつくる
奥田武雄さん。

おぉ、ようこんなところまできてくれたなぁ。
まぁあがってあがって。

突撃にもかかわらず快く招き入れてくれるあたたかさよ。

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賞状が部屋の四方を囲むようにかかってる。
それはなぜなら網織紬が高く評価されてるからだ。

網織、という字の通り、網を織った紬である。
昔むかし、琵琶湖の漁師は絹で作った投網を使用していた。
漁師が使った網にハサミを入れて、毛羽立った糸を紡いで
つくっていた生地が網織紬だ。

それこそ、男物の着物に使用していたそうで
どことなくワイルド感を想像させる。てか欲しい。

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今では漁師網はナイロンなどの化繊になったので、機械であえてこのようにヒゲが出たように紬をつくっていく。

そして、この網織紬をつくれるのは
奥田さんと奥田さんのいとこの2人になった。

息子はいるけど、継がせてない。
食えるかどうかわからない。
修行にだって10年はかかるよ。
もう80になるし、今からじゃ間に合わないなぁ・・・

伝統工芸の家元は、自分の子供が食えるかわからないのに継がせるか、
今までの歴史を畳むか、この瀬戸際でいつも悩んでいる。

技を磨くのに10年かかるのは、しょうがないかもしれない。
でも、技や哲学を残して行くには、”継がせること”しか道はないのだろうか。

でもさ、80になっても、今でも気づきがあるんだよ。
知らないことがたくさんあるんだよねぇ。

その一瞬、奥田さんは、なんていうか、
新しい道具を与えられた子供のようにキラキラしているようにみえた。
おれより50も年上だけど。

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