職人文化人類学

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【長浜】ヒゲロンゲが行く!職人のお宅訪問!両輪産業のはなし

2018/3/8 職人文化人類学の実践 Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ

witer:石井

東京に遅れること二週間。
滋賀でも花粉が舞い出す。
東京から滋賀に移動してきたから今年は花粉を二倍楽しめる。

昨日、今日、明日と浜工(浜縮緬工業協同組合)12社の
お宅訪問を敢行中!

以前の理事会に乗り込んだ(ともはや言ってしまう)ときに
会っていない職人は半数以上。
(組合の理事会にヒゲロン毛が来た!はコチラ)
ヒゲロンゲが乗り込んできて大丈夫かなぁ
と毎度心配にはなるが、商工会議所の吉井さんとの

吉「ヒゲにロンゲですけど、まぁ大丈夫です。」

T「なにが大丈夫なんですかね。」

「ハハハ」

ってやりとりが板についてきた。

そんなことはさておき、職人の格言シリーズを記録しておこう。

一軒目 両輪(りょうわ)産業

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いや〜この間は何言ってるかわかんなかったよ。
両輪さんは理事会で顔を合わせたが、
渡した資料がカタカナ多し、
文字小さし、
そしてラップのごとく話し続けたので、
10分の1もおそらく言いたいことが伝わらなかったのだろう。
と帰ってから資料を見返して反省している。

機織りってのはさ、リズムなんだよね。生活リズム。
両輪産業では、朝の6時半から機織り機が稼働する。
30メートルくらい先から歩いてくると、

ガシャンガシャンガシャンガシャん・・・

って規則正しい音が聞こえてくる。
ビートを刻んでる。
でも”生活”リズムという理由は?

朝6時半から、夕方4時半までは機織り機は回りっぱなしなんだ。
むしろ止められないんだよ。お昼どきもね。
この青いラインを見てごらん。
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バーコード的ななにかですか・・・?

この1ロールを織り上げるのに5時間かかる。
この青いラインが出てきたら、裁ちばさみで切って完成って合図。

でもね、途中でもし機械が止まってしまったら、
”厚弾”といって、テンションが変わってしまうんだ。
何が起きるって、生地の途中がスカスカになっちゃったり、
スジが入っちゃったりするんだ。
そうすると売り物にならない。

つまり、機織り機を止めるわけにはいかないんだよ。
1日に2ロールで計10時間、機織り機は動きっぱなしだね。
こうやって毎日、止めることなく、朝から夕方まで面倒見て
動かしてると自然と生活リズムもできるんだよ。

昔、長浜の機織りがもっと盛んだったころ、この町内にも何軒もの機屋があり
若者養成所のようなところもあったらしい。ちゃんと教育係もいたらしい。
もし息子がいたら、ぜひとも入れたい。

もう一つ、おぉ〜〜・・・と思ったはなし。
それは、縫い子、つまり工場で働く女性の存在。

両輪産業には60代の女性3人に50代の女性1人が働いている。
みんな、むかしどこかの工場で機織りしていた人たちだ。

この町には引退して、畑やってるお母さんとかたくさんいる。
でも実は彼女たちは工場で働いてたバリバリのベテランなんだよ。
やっぱり、なにもわからない素人さんに1から教えるのは大変だけどさ、
町のベテランお母さんたちが、こうやってスキルを活かして
働いてくれるのは助かるよね。
じぶんの技術で得たお給料で孫にもプレゼント買えるし。
なるほど〜〜〜!
と思った。
かく伝統工芸に関しては、育成に何年もかかる
”修行”期間がまずネックになる。

でも、稼働率が上がったとして、まず人手が足りない時に、
町のベテランネットワークを頼れば、教育係も雇えるところまで
いけるんじゃないか・・・

むしろ、ここ長浜ではどこもベテラン女性が工場で活躍してるから
それを自然にやっていたのかもしれない。

両輪産業がある宮部町は、古い町並みの中に湧き水が流れる
美しい集落だ。その中から機織りの音がする。

明日も朝6時半からガシャンガシャン。

この姿をみんなにみせて、両輪さんの話を聞かせたい。
一軒目にしてそう思った。

ひとまず、ヒゲとロンゲは怒られなかった。

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