職人文化人類学

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ヒゲロン毛と司令塔が行く!〜金沢工大でストーリーとデザインの話をしたならば〜

2018/8/1 職人文化人類学の構築 Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ

witter:  石井

金沢にきています。
す、涼しい。滋賀と東京に比べたら天国のようなカラッと感。

さて、今回は仕立屋のヒゲロン毛と、司令塔中田ヒデこと古澤が
金沢工業大学(K.I.T)と金沢大学の学生さんたちに

デザインとストーリーの組み立て方

の話をして来ました。
バリバリテックの彼らとデザインはどう絡み合うのか?!

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サイエンス X デザイン X コミュニティ?!

金沢工大といえば、超名門校。
全体の8割くらいは県外からの学生だそうです。

その金沢工大は今年の春、白山市に
超イノベーティブなコースをオープンしました!

その名も
HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE !!!
クリエイティブとサイエンスとコミュニティのニオイが
プンプンします。

金沢工大はこの北陸地域を中心に、
教育機関が社会課題にアタックするには。
そしてそのプレーヤーを育てるには。

ということにチャレンジを続けている、
ひじょ〜〜〜に珍しい学校。

近頃ではSDGs未来都市として国のお墨付きをもらうほど。

大学のイメージって、なんとなく政治やら面倒な手続きやら
モロモロモロモロあって、学校全体で一歩を踏み出すのは
難しそう。勝手なイメージですけど。

なぜイチ大学機関がこのような身軽な動きが取れるのか。
そのワケのひとつは、キーマンの事務局員

しかし、ただの事務局員ではございません。
産学連携局やイノベーション室の中で
指揮をとるプレーヤーが積極的に官と民のあいだに立って
プロジェクトを遂行中なのです。

今回はそのキーマン、福田さんにお呼びいただきました!
(福田さんをぜひ紹介してほしい!という方、連絡はコチラまで!)

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ド●えもんから紐解くストーリーの作り方

いきなりコンプライアンス引っかかりそうですが・・・

司令塔と、この話が一番わかりやすい。
ドラえもん秀逸!
ということで題材にさせてもらいました。
(悪いようには使ってないのでご了承を)

まず!今日の趣旨ですが、
バリバリテックサイドの学生さんたちに
ストーリーの構成とデザインの役割を体験してもらう。
としています。

ドラえもん?サイエンスに?テックに?現実世界に?

使えます。
モノゴトの本質を捉えるときに違いはないと思っています。
そう、なぜなら仕立屋と職人も現場で使っているからです!

では、参りましょーう!

まずドラえもんのストーリー構成を見ていきます。
(ドラえもん以外でもこの形はよく見られるので、
他の映画や漫画でもあてはめてみてください)

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1)まずのび太が抱えている課題をひとつに絞ります
2)救世主とはドラえもんのことです。自分だけじゃ解決できない問題を手助けするためのメンターとも言えます。
3)ひみつ道具=アウトプット。サービスやデザイン、プロダクトのことです。ドラえもんの四次元ポケットはアウトプットの宝庫です。
4)その道具を使っている間ののび太の体験や成長。のび太は新たな経験から試行錯誤をしたり新たな発見をしていきます。
5)アウトカム(その後の影響)は、1)でひとつに絞った課題に対して出ていなければいけません。ここが噛み合っていないことが多々起きるのですが、それは引っ張ってきた課題の本質がズレているか、アウトプットが最適ではないなどの理由が考えられます。

この5コマの間には、
しずかちゃんとのび太くんの関係だったり、
いつもイジメっこのジャイアンが仲間内で漢気を見せたり、
のび太たちが死にかけてピンチに陥ったりと、
色々と起きるのですが、大きく分けるとこんな感じです。

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ここでストーリーをつくる上で一番最初にしなきゃいけないこと。
それはのび太の性格(課題)を把握することです。

仕立屋と職人でいえば、伝統工芸の職人です。
(職人がのび太、というわけでは決してありません)

大事なのは本質的な課題を見つけることと性格を掴むこと
のび太の課題はあなたの課題とは違うし、職人とも違います。
ターゲットに対して、その都度探し出して定義しなければなりません。
(ここがなかなか大変ですよね・・・)

ドラえもんという物語の中で、のび太の本質的な課題とはなんでしょう?
日がな1日勉強もせず寝ていることではありません。
それは課題ゆえに起きていることです。

このままでは、のび太がいつまでたっても人として成長しない
というところにあるのではないでしょうか。

では、のび太にとって必要なものは何か?
それはドラえもんの道具ではなく、
ドラえもんの道具を使った時の経験値です。

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今回のワークショップに残念ながらのび太くんは参加していないので、
想像しなければいけません。彼の将来を。

どんな風に成長すれば、のび太はハッピーライフを送れるのでしょうか。
参加してくれた学生さんたちは、のび太の見えない部分の性格や
暮らしまで話し合っていました。

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もう一つ、ストーリーを組んで行く上で必要な要素があります。
これはヒゲロン毛がロンドンの大学院で学んだものを
すこ〜し変えたものです。

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登場人物:
主人公 メンター ライバル 敵 恋人 民衆 など
舞台:
病院 学校 公園 駅 電車 山 など
時間軸:
●●してる時 過去・現在・未来 など
課題・問題・障壁:
↑に書いた本質的な主人公の課題

登場人物はよくステークホルダーとかって言われるヤツですね。
これを埋めて、ストーリーづくりがスタートです!

お題は↓の穴埋めです。
1コマ目の、のび太の課題は各テーブルで4つ違う絵を用意しています。

その1コマ目の
絵から考察した課題を一言で定義するところからスタート
します。

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のび太の課題をどう捉えるか、は結構考える余地ありますね!

ワーク中に気がついたことがあります。
それは男子学生と女子学生で課題へのアプローチが違うということ。

男子学生は、のび太の周囲の環境に言及していたところが多い印象の反面、
女子学生は、のび太の内面から掘り下げていたかな、と思います。

男子学生の中では「のび太のカースト制度」「学校のシステム」
女子生徒の中では「のび太の男らしさや魅力」という言葉が聞こえました。
オモシロイ!!

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と、いうわけで新しいヒミツ道具を生み出してもらうだけではなく、
のび太の日頃の課題 と 道具を使用した後ののび太の変化 
同時に考えてもらいました。

本当は全部紹介したいんですが、ひとつだけ。

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男子+女子の混合チーム!
シートを見てみましょう。

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テケテケン

なぐさメガネ〜〜〜〜〜〜!!!

ありそう!!!
このチームの1コマ目は、のび太が思いを寄せるしずかちゃんが
出木杉くんになびいちゃってるシーン。

このチームはここから、
のび太に足りない男らしさ

男らしさとは何か

女の子が男らしさを感じる瞬間

とブレークダウンしていきます。

女の子が一番男らしさを感じる瞬間。
それは、相手がほしい一言をさりげなく言える男だ。
というのです。

う〜〜〜〜ん、勉強になります。
男子学生はみんなおぉ〜〜〜と唸ってました。
マネしましょう。

つまり、このなぐさメガネは
しずかちゃんが落ち込んでいる時
イチバンほしい一言を映し出せる。
というものです。

のび太に踏み出すキッカケを与えるのです。
代わりに言ってはくれません。

このメガネをかけたのび太は、
最初メガネの力を頼ります。

しかし、徐々にしずかちゃんが
ほしい一言を“さりげなく”かける行為に慣れていき、
いい男に仕上がって行くのです。
そのうち、このメガネもいらなくなるでしょう。

このアイデア、いいなと思った2つのポイントがあります。

アウトカムの良さ

1つめは、出木杉くんを攻撃しなかったこと。

よくライバルが出現すると、相手を陥れたり攻撃したりしてしまいます。
しかしそれは本人の本質的な課題解決には至らないのではないでしょうか。(まぁ、たしかにそういうストーリーもいっぱいありますけど・・・)

これはデザインのワークショップでもあるので、
やはりポジティブな解決策がいいですよね。
のび太は自分を磨いていつの間にか出木杉くんをも凌駕します。

アウトプットの良さ

もうひとつは、メガネというところ。
仕立屋もよく直面する問題でもあるのですが、
慣れないことをユーザーにしてもらうって非常に大変です。
できれば普段の私生活に馴染むものがいい。

このアイデアは、のび太が普段メガネをかけているという
習慣にフィットしています。

かけ心地次第ですが、
のび太はメガネをかけ慣れている。

周りからその変化に気付かれづらい。

というのは大きなポイントかと思います。

さて、
ドラえもんがどう最終回を迎えるか、みなさん覚えていますか?

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超泣ける。
僕だけの力で、きみにかたないと・・・・・。
ドラえもんが安心して・・・・・。
帰れないんだ!

この言葉に集約されています。
ふがいなかったのび太。いじめられっこだったのび太。
もうドラえもんがいなくてものび太は大丈夫。

ただここに至るまでに
小さな成功体験の積み重ねがあったことを
忘れてはいけません。

これは言わばのび太の長期ビジョン達成。
そこにたどり着くためには、
クリアすべき短期・中期ビジョンの成功
コツコツ導かないといけません。
だって基本的にのび太はなまけものだから。
途中でイヤになっちゃうから。

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ストーリーはあくまで隠し味

今回、めっちゃ勉強になったので長くなってしまいました。
この辺でまとめにかからないと、あと2倍くらい行っちゃいそうです。

このメソッドは現実世界と遠からずだと思っています。
しかし、往往にして思い描いたストーリー仕立てになんて
コトは運びません。

その時に必要になってくるものが、
デザイン(編集を繰り返して伝える)と
プロデュース(全体が破綻してないか、最適な道かの判断)
なのかな、と思います。

課題を汲み上げて定義して、ビジョンを描いたって、
実行できないとそれはただの絵に描いた餅。

でもこの結果を残すための実行が一番ムズかしい。
それは仕立屋の活動でも日々感じています。

ストーリーをつくるのは、
迷った時に自分たちが立ち帰れる場所にするため。
このストーリー、ブレてない?という判断基準。

それに気づかぬうちに巻き込まれて行く登場人物のみなさん。
いつの間にか達成されているアウトカムの5コマ目。
というのが理想でしょうか。

ストーリーは決して
相手にゴリ押しするものではない
と近頃は感じています。

仕立屋と職人ともども、
縫子、装飾、参謀、運屋の特性を活かして
課題にアタックしていこうと思います。

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