職人文化人類学

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金髪女とヒゲロン毛が伝統産業のカンファレンスに行ってみた話。 (第一話)

2018/5/22 職人行脚 Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ
witer:石井

「財前教授の総回診です。」

そんな言葉が聞こえてきそうな(勝手なイメージ)カンファレンス。
仕立屋号を飛ばして、一路岐阜県は高山市へ初上陸を目指す。
そう、中川政七商店会長、かの中川政七(呼び捨てか)が牽引する
日本工芸産地協会が主宰する

産地カンファレンス in 高山 2018

に参戦!ただのお客さん!

会場入るなり、他に金髪とヒゲロン毛は見当たらない・・・
おそらく、日本各地の伝統工芸に関わる経営者や行政の人が多いんだろう。

あ、見慣れた顔が。
長浜商工会議所の吉井さんとニッポン手仕事図鑑の稲垣さん!
よかった、ホッとした。

席をGETしてすぐさま、斜め後ろから声をかけられる。
次はなんだ。

ムサビ時代の後輩で、今は飛驒産業でデザイナーとして活躍している、
上條憲一郎くんが「こんなところにロン毛と金髪はおかしいなと思って。」と見つけて声をかけてくれた。

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↑こちらが憲ちゃんです。脂乗ってます。滋賀ともいろいろご縁があるそうです。

飛驒産業は言わずと知れた国産家具ブランド。
飛驒はもちろん、北海道など国産の木を使用してあらゆる家具をつくっている。当社も協会の一員で、今回のカンファレンスは飛驒産業がメインに関わっている。

さて、今回のテーマは

工芸と工業の次

長浜でも、シルク産業は工芸なの?工業なの?という議論にたまになる。
工芸、工業、民芸、産業・・・その違いは何か。仕立屋が発見する!

まず、飛驒産業の岡田社長が
どうやって飛騨で匠を育てるか
という話をスタートさせる。

ちなみに、岡田社長はカンブリア宮殿に出演済み。
(最近周りがガイヤガイヤなっているので、
と、思ったらカンブリアでした。失礼しました。ガイヤ熱が・・・)

飛騨産業は2020年に100周年を迎える老舗ブランド。

もともとは飛行機のタンクを木でつくったり木製航空機を製作していて、終戦後からインテリア業界への進出が加速した。なぜここまでその名を轟かせたかというと、曲げ木(木を椅子の背のようなカーブを作るためにグニャっと曲げる技術)や、普通は避けられて使われないような木のフシをあえて取り入れた家具を展開してきたことがあげられる。

ちなみに、飛騨産業の工場の一部は森の中の廃校を再利用している。
高山市街地にあるショールームも廃校をリノベしている。

うーん、捨てられてしまうようなところを活用する、もったいない精神というのはいつも突破口になりえる。和装も洋装と違い、裁断することなく和服に仕上げていくところとか考えても、日本のものづくりはこの精神にやっぱり根付いてるんだろうなぁ。そして、一見役に立たないものとみられがちなものに価値を見出すのも日本人の特性だと思う。

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そして、おそらくこのカンファレンスでどの参加者の頭にも残ったであろう坊主頭の彼ら。職人学舎で修行する、木工職人の卵たち。

壇上で職人の心得30か条を説いていた。

彼らは2年間、ほぼ休みなく学舎に寝泊まりし、携帯は使えず、恋愛も禁止、さらには男女ともに坊主頭である。ひたすら木と対話し続ける。

技もさることながら、精神も研磨されるわぁ・・・
自分だったら逃げ出すわ・・・

とか思いながら、なぜ職人が減って行き、わりと個人プレーが好まれるこの時代にこのような厳しい環境を与えるのだろう、と思った。

それは、職人はこうであらなくてはいけない!ということではなく、
若いうちに技術を知りながら人間性を磨くこと、に意味があるのだという。

なんとなく、

あぁ〜この大学受けとこっかな〜

あぁ〜この会社受けとこっかな〜

あぁ〜この辺に家買っとこっかな〜

あぁ〜このあたりで結婚しとくかな〜

と、生きていく上で無限に湧いて出てくる

”しとこっかな〜”となる前に考えて決められる、それを行動に移せる
人間になるように、職人気質を教え込んでいるそうだ。

偶然は必然なのだよ。

と昔、尊敬しているアイルランド人のおばちゃん(やり手の起業家で教育者)に言われたことを思い出した。

あんたのデザインになぜ人がお金を払うか、考えなさい。
あんたが調べて、考えて、失敗もして、辿り着いたその軌跡に価値があるんでしょうが。最後の一滴が”絵”なだけであって、なんであんたしか辿れなかったその道のりを語ろうとしないの。同じようにどんな”絵”にも、そこまで辿った道があんのよ。全部の意味を見逃さないようにちゃんと考えて生きなさい!・・・

この日、あんたのデスクトップの画像について説明してみなさい、と言われ絶句した。

日頃考えるのはなかなか大変なので、そんな簡単にできない。
でも普段からやっていれば少しずつできるようになる、かもしれない。
彼らが学んでいるのはこういうことに近いのかもしれないな、と思った。
息子がいたら、ぜひいれたい。

カンファレンスは始まってまだ30分。
書ききれないので次回に持ち越し。

いよいよ十三代・中川政七、塗師・赤木明登、哲学者・鞍田崇が紐解く
工芸と工業の次へ!

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