職人文化人類学

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シャナリシャツ創世記 #1 ~ハッピーシタテヤショップ構想(仮)~

2024/5/10 シャナリシャツ Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ

前回は弊社が新規事業創出に苦しんだ暗黒時代を抜け出せそうだ、もしかしたら雲間から光が差しているのかもしれない、という話でした。

そして私は「ハッピーシタテヤショップ(仮)構想」を考えることにしました。センスのカケラもないネーミングから、まだシャナリシャツに到達していない様子が伺えます。

ハッピーシタテヤショップはどんなショップにしたいか、爆速で数案考えました。共同代表と数案熟考し、その中で残った案が着物でシャツをつくるという構想でした。いきなり話が飛んでいますね。でも、いきなりココへ辿り着いていました。

疑心暗鬼に思っていた新規事業ワークが脳内に染み付いていて、思考がスムーズに進んだのかもしれません。(弊社暗黒時代は、産みの苦しみを経験する貴重な時間をもらったと考えよう。)

なぜ洋服だったのか。

私は美大を卒業してから、古着(Tシャツやトレーナー)を使いフレンチブルドッグ用の犬服をつくって販売する、ということをしていました。人が着るには手首がヘロヘロ、けれどもプリントされているところは可愛いし綺麗、そういう部分だけを使い洋服をつくっていました。(シャナリシャツの原点ですね)

その後、つくる技術とデザインする技術を更に学ぶため服飾の専門学校とデザインスクールへ行きました。そんなこんなで私はシャツをつくることができたのです。

以上のことを踏まえると、話は早いっ!すぐにプロトタイプをつくって、まわりの反応を見て…と今の私たちならガンガンとテストすることができます。

なぜシャツだったのか。

パンツはつくらないの?ワンピースはつくらないの?カバンはつくらないの?とご質問をいただきます。【シャナリシャツ】とブランド名にシャツをつけているため弊社はシャツ屋をしております。

着物は(着物用コートとか諸々ありますが大まかなつくりのところで)大体同じ形です。性別や年齢関係なく同じ形です。その汎用性は現代で言えば何かと考えたら「シャツ」にたどり着きました。

・性別や年齢関係なく着ることができる(ターゲット問題)
・素材を変えれば、カジュアルからフォーマルまで着ることができる(シーン問題)
・サイズの大小は自分の好みで選べる(サイズ問題)
・同じ形のシャツでも、生地が変われば全く違うものに見える(デザイン問題)

おお、なんと、シャツは完璧なアイテムなのでしょう。まぁ素晴らしいアイテムほど難しいんですがな。ターゲット、シーン、などなどそこもしっかり考えられている、まさに新規事業創出ワークが染み付いていることが伺えます。

なぜ着物だったのか。その1

2017年に移住した滋賀県長浜市は浜縮緬、輪奈ビロード、網織紬といった絹織物の産地でした。その事業者の方たちとプロジェクトをさせてもらう中でつくる現場をたくさん見せてもらい、しかも弟子入りもさせてもらいました。

現場で見た職人たちは、糸一本乱すことなく織り続け、顕微鏡で見ても美しい布をつくっていました。

しかし、着物を着る機会のない私にとっては縁が遠く、しかも高級品なので簡単に手に入るものではありませんでした。

なぜ着物だったのか。その2

長浜の方々から聞いた話です。「昔は桐ダンスにたくさん着物を詰めて、嫁に行った。そのタンスは重ければ重いほど良いとされたが、結婚後忙しくて着る機会はなく、しつけ糸がついたままタンスの中で眠っている、若い頃に選んだ着物だから今の自分は着ることができないけれど、思い出のものだから簡単に手放すこともできないから、誰か欲しい人はいないか」という話です。

一人二人から聞いた話ではなかったため、ずっと頭の隅に残っていました。

なぜ着物だったのか。その3

私の祖母がお茶をやる人で、たくさんの着物を持っていました。その祖父母が亡くなったタイミングで荷物の整理をしていて、着物一式は私がもらいました。しかし、その着物たちをどうすることも出来ず、実家にてプラケースの中で眠らせ数年…。そろそろ整理しようと思い腰をあげ、買取業者に来てもらい引き取ってもらいました。

しかし、ほぼ値段はつかず、値がついても一着1000円、高くて3000円。値がつかないものは、「この着物の山で素材として500円で引取ります」と。

きっと祖母が買ったときにはとても高いものだったはず。状態がいいものは着物として中古販売されるとのことだったが、値がつかなかったものはどこへ行くのだろう…と、モヤモヤモヤモヤ。

このモヤモヤは私だけじゃないのかもしれないぞ、と思った出来事でした。

今こそブランドを立ち上げる時がきた。

自分たちだからできることが見えてきました。

誰かのためではなく、自分のためにつくることができそうです。

長浜に移住したこと、長浜のシルク産業に携わらせてもらったこと、地域の人たちの声を聞いたこと、祖母の着物を処分したこと。

全て出来事からタンスに眠っている着物で私が着たいと思うシャツをつくってみよう!と辿り着きました。

私が着たいシャツとは。

私は着物が好きというわけではありません、着物が好きだったら着物として着ているはずです。

私みたいに特に着物に興味を持っていない人でも着ることができ、すでに持っているボトムスに合わせることができるシャツです。

私には「誰かのため」の「誰か」はいませんでした。自分が欲しいものをつくる、それがなぜ欲しいのかという理由があれば、他にも同じ思いの人を見つければいい。

自分のガッチリとした思いがあれば、ちょっとやそっとのリスクになんてヘコタレません。むしろ戦闘力が俄然ブチ上がりです。

ここまで辿り着いたら、サッサとプロトタイプをつくりましょう!!

次回は実際にどのようにプロトタイプをつくって試していったかというお話をしたいと思います。

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