職人文化人類学

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粋≠良質

2018/1/23 徒然なる仕立屋 Writer:仕立屋と職人 イシイとワタナベ

witer:石井

「ずいぶんとクラシカルな町に引っ越したね〜」

「東京から来たんじゃ大変でしょ〜」

「寒いでしょ〜」

「雪すごいでしょ〜」

引っ越して来た直後 (いや今もか) 色々な”お気遣い”の言葉をいただいた。
いや、ここ結構面白いっすよ。いや、かなりいいっすよ!
20時には人歩いてないけど、ここ面白い人いっぱいいる。

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ユカさんは、水場のある古民家に一目惚れして、東京との2拠点をはじめた。
木之本の集落に住みながら、機織りと染物をしている。
着物って一着持つにも大変だし、そりゃよほど好きじゃないと着れないよね。
そんなわけで自分で糸から紡いで織った生地を着物にまでしてるユカさんは
多くの人がシェアできる着物サイクルを・・・そんなことを始めている。

古民家改装 機織り機 井戸 草木染め 集落 2拠点
おもしろワードばっかり並ぶ。

「チワ〜っす。」
今日は近所の兄ちゃん、ノダさんがフラッと現れた。
ノダさんは最近富山かどっかから流れ着いた。
今は銘酒冨田酒造で朝から晩まで働いて暮らしている。

散らかってる浜ちりめんの殴り書きを見てノダさんが言う。

「祭りってのは見栄だよね。俺のがイケてる。目立ちたい。

曳山は商人の町なら大抵どこでもあると思う。

山車は隣町と競い合ってキンキラキンに、
背はもっと高く、もっと高くってなってった。
やっぱり着てるモンも気合い入るよね。

職人の技、日本人の粋な心って、この見栄と結びつくんじゃないかな。

特に浜ちりめんはハレの舞台のためにあってもいい。
職人の粋な仕事の見せ場として、祭りの舞台があってさ、
そこで担ぎ手が浜ちりめんを纏って見栄を張れる、そんな風に
見栄のシステムを現代に合わせて変えることならできるんじゃないかね。」

こりゃあいい。見栄のシステム。見栄は価格に際限がない。

「”いいものを作ってる。自信がある。”
それだけじゃあもうお客はついてこない。
自分たちで最高の仕事を、最高の舞台で、
プレゼンできたらいいよね。」

そうか、着物ー生地ー浜ちりめんって図式なってるから、
どこで使われるか、そのシーンが想像できないんだ。
日常で使えなきゃいけないけど、見栄(え)をよくできる
シーンはいくらでもある。そこに浜ちりめんを合わせりゃいいんだ。

粋=いい仕事
は当たり前の話なのかもしれない。
粋=見栄
これはいい仕事の先を想像させる。

フラッと現れてヒントを置いてったノダさんにありがとう。

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